あらすじ
側室である母を亡くした明蘭は、正室の娘と側室の娘である姉二人がひっきりなしに争う中、目立たぬよう気を付けて過ごしていた。
身の丈に合った相手と平穏に暮らせればよいとだけ思っていたが、思わぬ形で結婚することになり、その秘めた才知により数々の難関をくぐりぬけてゆく。
登場人物
明蘭
機転が利くのは確かだが決して聖人君子というわけではなく、敵に回すと一番恐ろしいタイプだと終盤で分かってくる。そのうち女性社会の中で絶大な権力を誇るようになりそう。
大奥様
盛紘の義母で、侯爵家の一人娘でもある。聡明で発言力もあり、物語を通しての良心的存在。血のつながらない明蘭を引き取って育て、大切にする。この人なくして明蘭なし。
顧廷ヨウ(火へんに華)
明蘭をことあるごとに助ける運命にある男。
文武両道で賢く、磊落で度量の大きい人物だが、敵も作りやすい。
斉衡
名家の一人息子でルックス・人柄・才知を持ち合わせた理想の殿方。明蘭のことが気になっている
盛紘
明蘭の父で官吏。自分の意見のない風見鶏で思慮が浅く、全く頼りにならない。人を見る目もない。およそ役に立たない家主だが、無能なだけで悪人ではない。
若沸
盛紘の正室。瞬間沸騰器みたいだからこの名前なのかと疑ってしまうほど気が短く、わめいた回数は数知れず。明蘭のことは気にかけていないが、いじめてくるほどでもないので、案外憎めないタイプ
林禽霜
墨蘭、長楓の母で側室。泣き落としを武器に、正室の若沸を蹴落とすことに命をかけている。
華蘭
正室(若沸)の娘。優しくまともな一番上の姉上。家族内では珍しく普通に話が通じるのでありがたい存在。「耐え忍ぶ」コマンドしか持っていないタイプ
如蘭
母親(若沸)にめちゃめちゃ似ている姉上。短慮で怒りっぽいが悪人ではない。特に明蘭をいじめてくるわけでもなく、むしろ仲良し姉妹に近い
墨蘭
林禽霜の娘。泣き落としが得意で承認欲求の強い姉上。性格の悪い母に育てられたのでまともな倫理観を持ち合わせておらず、人を蹴落とすことに躊躇がない
長伯
真面目で誠実で頭の良い、頼れる兄上。若沸から生まれてよくこういう感じに育ったな??
長楓
林禽霜の息子。絵に描いたようなバカ息子っぽい兄上。家族に色々あり過ぎて最終的に丸くなるが、終始空気感が否めない
秦氏
廷ヨウの継母。聖母のように優しく見せながら、人を操り爵位を我が子に継がせようと策略する悪女……という設定だが、本性が隠しきれていない
朱曼娘
廷ヨウの側女。無力で優しい女と見せかけて金のことしか頭にない。開き直ってからの金切り声レベルが高い
康夫人
若沸の姉。ろくでもない女
小桃
明蘭の侍女。特別頭が切れるわけではないが、小さい頃から一緒なので姉妹のような関係
石頭
廷ヨウの腹心。悪口みたいな名前だなと思ったが、顔を見るとぴったりで笑ってしまう。小桃に気がある
ネタバレなし感想
73話あるのに一週間で観てしまった。あっという間。
一夫多妻制かつ厳しい規律や風習があり、女性が幸せに暮らすことが極めて難しい時代背景の中、庶子として生まれた明蘭が賢くたくましく生き抜いていく話。
前半はいじめシーンが続くと聞いて身構えていたが、思ったよりひどいいじめじゃなかった。シンデレラ的な境遇を想像していたが、少なくとも下働きをさせられてはいないし、私塾に通わせてもらっているし、祖母に可愛がられているので、案外平穏な印象を受けた。
もちろん、兄弟姉妹の方が優遇されており、母のいない明蘭はほとんど気にかけてもらえないが、控えめに立ち回っていることもあって、姉妹仲も思ったほど悪くない。
正室と側妻のバトルが激しすぎて、むしろ傍観者に近い立ち位置だったかも。たまに巻き添え食うけど。
恋愛については、思い通りにいかないあたりが割とリアルでもあり、残念でもあり。でも与えられた選択肢の中で最大限幸せになろうとするのが明蘭の良さであり、面白さ。
そもそも、全体的に陰鬱で理不尽な世界観(というか風習)の中で、幸せつかむルートが少なすぎる。一マスしか正解のないマインスイーパみてえ。この時代に生まれるくらいなら死んだ方がマシ。
女は男と二人で話しただけで人生おしまいだし、使用人はささいなことで殺されるし、冤罪でもろくな調べもなく拷問にかけられる。目上の人間はどんなに暴虐でも絶対に敬わないといけないし、許可がないと口を開くことすら許されないし、男はほぼ全員マザコン。
それと性悪女多すぎ。キイキイ甲高い金切り声を一生分堪能できる。ただ、悪人はほぼ無惨に死んでいくので、はっきりきっぱりしてんな……とも思った。改心エンドがない。
明蘭を引き立てるためでもあると思うけど、後先考えないアホな人が多い。大抵のことは切り抜ける明蘭の快進撃的な話だと思うけど、見終わってからの爽快感は意外とない。なんかひでえ世界だったな……という印象ばかりが残った。
ネタバレ感想
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若公爵との初恋の結末がほろ苦い……というか苦い。若公爵は顔も人柄も家柄も良い理想の王子様的存在で、明蘭と結ばれていたらどうだっただろうか、と考えてしまうのは全視聴者共通なんじゃないだろうか。最後まで見ていくと、顧家に嫁いだのが正解だったと思いはするが、それはそれ、これはこれ。二人の甘いシーンも見て見たかった。少なくとも顧侯爵が抱えたような不満は、元若には発生しなかったんじゃないかな。
元若と結ばれなかったことで、明蘭は恋愛感情を一度捨て去ってしまったように見えた。それよりも夫婦として家族として尊重しあえる相手であれば良いと考えていたことが侯爵を悩ませたけど、最後には言いたいことを言い合える間柄になって、嫉妬も覚えて、愛は後からついてきた。結構珍しいタイプの話だった気がする。
明蘭も侯爵も清濁併せ呑むタイプで、場合によっては手段を選ばないタイプだから、意見の相違が起こりにくい組み合わせだと思った。元若は、明蘭の烈女的な側面を見たら引いてしまいそうな気がする。
ただし明蘭に限らず、中国のヒロイン像ってこういうタイプが多いとも思う。日本や韓国のドラマだと、優しさ100%でできていて、どんなことがあっても「耐え忍ぶ」コマンドしか持ち合わせない聖女タイプのヒロインがいるものだが、中国ドラマのヒロインは、性格が良い設定であってもやられたらやりかえすことが多い。あるいは自ら手を下さなくとも、友人や彼氏が仕返しをすると嬉しそうにする。
この辺りが、考え方の違いなのかもと思う。理想の女性像の違い?
娘時代は才覚を隠し(あんまり隠しきれてなかったが)、嫁いでからは存分に発揮してゆく明蘭の賢さが見どころだけど、残念なのは終盤はその見どころがなりを潜めてしまったところ。あんなに冷静沈着だった明蘭が取り乱し、凡庸な女のように泣き叫ぶシーンにがっかりしなかったと言ったら嘘になる。
知略を巡らせて他人を思うように動かすことに長けていた明蘭が、今度は知略によってなすすべもなく動かされてしまう。
状況からして仕方ないと思える部分もあるが、物語としての主題がぼやけてしまった感じ。しかもそのままエンディングだし。いかに明蘭とはいえ、どうしようもないこともあるし、辛酸をなめる時もある……リアルではある。
でも、寄る辺ない存在だった明蘭が、絶対妻守るマンな夫と莫大な財産とBIGLOVE手に入れたよって喜ぶべきなのかもね。もう全てを自分の力で乗り切らなくてはいけない状況ではなくなったのだから。
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